未分類

第一回CCNワーキンググループ討論会の様子

2019年11月7日に開催されたワーキンググループ討論会における参加者のスピーチをテキスト化したものです。開催に当たっては細かいテーマや指針などを提示することなく自由な発言を参加者にお願いしました。従って参加者各自の発言内容はCCNの活動方針を代表するものではありません。

– 出席者 –
A:安達かおる-V&R代表取締役/CCN代表理事
B:CCN加盟メーカー代表取締役
C:フリー女優
D:フリーライター
E:一般女性代表
F:一般男性代表
G:元エロ本編集者


↓見出しをクリックしますとスピーチの内容をご確認できます。

 

AV観る人は「適正」なんて気にしない

(Bによる業界相関図説明からスタート)

C:そういえばAVANってどうなったんですか?

B:AVANって出演強要問題が出てきたときに、女優さんを守ろうとして発足した団体ですよね。フリーの女優さんが登録して、出演や撮影内容はもちろん、それまであいまいだった出演作の2次使用料をメーカーから徴収して、女優さんに支払ったりする、はずだったんですが…。

C:そのAVANが、フリー女優に強要被害の相談窓口を作って欲しい、という話を振ったというのを聞いたことがあるんですよ。ですけど、私たちフリーは別に仕事を持っている場合が多いし、そのために人件費を出すといってもどこから出すの?という話になって、結局実現できていないんですよね。それに事務所に所属してる女優さんは、事務所の指示どおりにしか動かないですから、強要があるとかって現状を全然知らないんですよ。

B:2次使用料については、IPPAが新AVAN--ご存知とは思いますが、AVANって一回解散してるんですよね--に支払って、そこから女優さんに渡すことになっていたんですよ。

C:私たちみたいに、現に活動している女優はそれで問題はないと思うんですよ。だけど私の知り合いで、引退して10年以上経つ元女優さんが、その当時撮った作品の再編集がネットで流通していると知って、困っているんですよね。それに対する相談はどこに言えばいいの?という話が出て。あとでその元女優さんに、AV人権倫理機構の相談窓口を教えたんですね。それからどうなったのかは、まだ聞いてないんですけど…。

A:CCNは、あくまで出演強要をなくし、自分たちの高度な倫理観の中で法令を遵守して、良い作品を作っていこうという趣旨で作った団体なんですよ。だけど、今までの業界の外から来た製作者と女優さんの間のトラブルが増えているというのが実情なんだよね。
だけどそういう問題は、観る人たちには関係ないんだよね。そのAVが適正なのか不適正なのか、正規版なのか海賊版なのかは、誰も意識していない。でもAV関係者が強要問題を起こしたり逮捕されたりすると「だからAVは!」という目を向けられてしまうことになっちゃうんですよ。

「強要」と「作品を作る意志」

A:CCNでは「統一契約書」を作って、出演者の意向を重視するようにしているんです。ところが撮影して一週間も経たないうちに「あの撮影は出さないでくれ」と言ってくる人が意外と多いんだよね。だけどそういう要望を全部聞いていると、会社が傾いちゃうんだよね。
僕らは企業としてAVを製作しているわけで、出演者と対等な関係に立たないことには、仕事が成立しない。だから僕らは逆に、どういった女優さんがどういったこと言うか、それでなにが「強要」とされてしまうかを、悪い意味で学習してしまったような気がするんだよね。「撮るときにこういうことを言っておけば、強要にならないよね」とか、女優さんにプレゼントを渡すところを撮っておいて「楽しんでたよね」ということを、やっちゃったりするんですよ。
ちなみにCさん、事前に聞いていたことと、現場で要求されたことが違っていたってことは、今までありました?

C:ええ、それなりに。ある現場に紹介者の方と一緒に行ったとき、監督からその場で、事前に決められていた内容にプラスしたことを求められたんですね。それはオムニバス作品だから、他の出演者と変化をつけたいので、ということで監督と紹介者、それに私とで話し合いをしました。結果的に私がOKしたんですけど、でもこれってフリーだからできることなんですよ。事務所に所属していたら、マネージャーを通してやりとりしますから伝言ゲームになって、絶対トラブルになっていたと思うんですよね。それでなぜ私がOKにしたかというと、A監督みたいに作品づくりに熱心だったからなんです。

D:強要問題で被害に遭った女優さんのインタビューを読んでいるうちに、作る側と出る側のコミュニケーションが、圧倒的に不足しているのが原因だと気づいたんですよ。たとえば女優さんにプレゼントを贈って気分を良くさせて撮影して、ということでは終われない問題ですよね。現状では難しいのかもしれませんけど、良いものを作ろうという現場での一体感を築いていくのって、大切だと思います。

A:強要になるかどうかを決めるのは、僕の造語ですけど「監督力」なんです。監督が持っている制作への意欲を汲むというか、監督と出演者の意識がマッチングすることが重要。たとえば、台本に「歩く」とあったのを、現場で「走ってくれ」と言うと、台本と違ったことを要求されたと「強要」にされることもある。

C:実際、台本どおりに絶対いかない現場はありますよね。

強要が萎縮を生んだAV業界

A:今、AVの現場で何が起きているかと言うと「萎縮」なんだよね。やる気のある女優さんは「監督が萎縮しちゃって、言いたいことを言ってくれない」と嘆いている。

C:同時に「監督の要望に応えられないと、次に呼んでもらえなくなる」と、萎縮しちゃう。

A:そんな状態で、監督からしてみれば「ちょっとでも台本にないことをしたら、契約違反になってしまう」という感じで、なおさら萎縮しちゃう。

B:今の業界は、モノを作ろうとする監督は少なくなってるし、出演する人は「演者」として来てるんじゃなくて、お金が欲しくてエロいことしたくて、来ているってだけになっていて、少しでもいいものをと思って強い口調で言うと「それ強要です」と返されてしまって、何も言えなくなっている。
私がこの業界に入って感じた印象は、ものすごい「ゆるさ」なんですよ、誰も自分の仕事を突き詰めていなくて。加えて女優さんが一番大事なのにもかかわらず、作るものの傾向が徹底して男尊女卑。すべて女性が受け身で、男性が決めたとおりに動く。これだけで現実に目の前にある現場との食い違いがすごい。そのうえで、やってることを法律的に詰めていくと「強要」ってことになるわけですから、もう監督がなにもできなくなっていて、現場も作品も成り立たないんですよね。

A:面白い話があるんだよね。現場でどう撮るか迷って出演者に相談すると、審査団体に電話するんだよ。「こういうの撮りたいって今日の監督が言ってるんですけど、それって審査通ります?」って。で、審査団体が「それは無理ですね」と言ったら「じゃ台本変えましょう」ってことになっちゃう。
AVでも映画でも、監督ってのは撮りたいものがある。でも今は、自主規制とか適正って枠組みの中であまりに制約が多い。だから映像のプロであるはずの僕たちの表現を、インディーズ映画がはるかに超えてしまっているんだよね。そうなると、もうAVは見限られてしまうんじゃないかなあ。

D:掲示板サイトを見るとAV女優の求人が出ていて「高級マンション」「お試しで●万円ゲット」って書いてあるバナーが貼ってあるんですよ。そして「新人モデル募集」としか書いてなくて。だからそれに応募する女性は、演じるとか表現するとかっていうんじゃなく、収入や好待遇に惹かれてくると思うんですね。それでメーカーは、かわいいとか元アイドルっていうところを強調して商品を売っていて、観る人たちもそこに惹かれる。だから「作品を作るぞ」って情熱が、伝えられなくなっているんじゃないかって。

B:今Dさんが言ったような募集をしちゃうと、有害業務ってことになっちゃうじゃないですか。募集のあり方が変わらない以上は、もう手詰まりになるしかないと思うんですけどね。

一般人から見た強要問題

A:Fさんは、僕たちの業界にある強要問題ってご存知ということなんですけど、一般の方から見てこの問題、どう思います?

E:どうでしょう…状況としてはあり得るとは思うんですけど、それをどうやって防ぐかというのは難しいような気がします。どこからが強要かの線引きが難しいと思いますし…。

A:そんな状態で、監督からしてみれば「ちょっとでも台本にないことをしたら、契約違反になってしまう」という感じで、なおさら萎縮しちゃう。

A:結局、強要問題って学校のいじめと同じ。いじめる側も強要する側も、自分がそれをやってるという自覚なしでやってるところが。

E:私は単純に、だまされて、違うお仕事ですよって言われて行ってみたらAVの撮影だった、というのが強要だと思っていたんです。でも、女優さんがそう思っただけで強要になることもあるわけですよね。あとやる気のある、作品を作ろうという意欲のある女優さんと、そうではない女優さんとでは、同じことをやっても強要になる場合とそうではない場合があるということになりますから、そうなるともう、強要をなくすことが自体が、無理なんじゃないかって気がするんです。

D:それって普通のSEXでもありますよね。そのときは納得していた気がしても、あとで考えてみると強引に迫られて仕方なく応じていたり…というのがあって。

A:そういう場合って、二人の間に同意と愛情があればそれでリカバリーできるものでしょう。それはAVにも必要だと思うんです。女優さんが「私はこれが苦手だけど、この監督が言うからがんばります」というのがないと。

C:そうですよね。監督が求めているものに対して、自分がこれだけの成果を出したんだから、それを残したいっていう気持ちはすごくあるんですよ。でも最近は、それがうまく通じなくて、限界を感じているんですよね。

A:意思の疎通さえうまくできれば、だましたりなんかする必要はなくて、なんでも相談できるようになるんだよね。

B:今のこの業界は「女性が知る権利」が足りないんです。出演料を開示したうえで作品の内容と撮影するときの条件をしっかり伝えて、女性がそれに対して「この作品を作るんだ」という選ぶ権利と知る権利がないんです。

D:それって結局、事務所の力が強すぎるってことですよね。

C:最初に出演料から入っちゃう女優さんが多い。このギャラだからここまでしかやらない、という女優さんがあまりにも多いんです。

B:撮影前に、撮る内容の概要を送る監督も少なくなっているといいますしね。その件で何度か事務所の方と話したことがあって、送った台本を女優さんに渡しているんですかと聞いたら「女優はそんなもの読まない」と、言われちゃったんですよ。

C:業界団体からは「台本は撮影3日前までに必ず出してください」という決まりが伝えられているはず。でも事務所が見せていないのが明らかで。

B:事務所としては全部女優さんに開示しちゃうと、仕事を断られるリスクを背負うわけです。でも台本をちゃんと見せていないと、事務所が女優さんはもちろん、メーカーに対しても嘘をついていることになるじゃないですか。だからそこをクリアしようとして、事務所といろいろ話して、女優さんの意思を確認しようとしたんですね。そしたら、その女優さんからのSNSでの返事を見せてくれたんですけど、それが一言「大丈夫です」だけ。でもそれだけでは、なにがどう大丈夫だと女優さんが言っているのかが、こっちにはわからないんですよね。

強要問題で業界は変わったのか?

D:なにか問題が起きると、最初に責められるのが制作者、特に監督さんじゃないですか、女優さんから名指しされたりして。

A:「監督NG」ってのがあるからね。

D:でも実際には、事務所が女優さんに必要なことを伝えていないわけですよね。それに「この女優は扱いづらいから、キツイ現場に行かせちゃえ」ってやってるって話も聞きますし。そういう体質が変わらない限り、また女優さんの不満が募ってそれが現場を仕切る監督のせいになって…という悪循環が続くだけで、問題の原点を解決しない限りなにも変わらないんじゃないかなって気がします。

E:そういうお話を聞いていると、作品を作りたいって思っている女優さんが、はたしてどれくらいいるんだろうっていうのを、すごく感じました。

A:だから「今日はフェラ2回に絡み1回ね」ということしか聞いていないし、本人もそういう気で現場に来ている。

D:仕事イコール経済活動というか、お金をもらうためだけの行動。

B:いや実際、事務所の人に「映像作品を作るってことは、良いものを作って人に感動してもらって、その結果としてお金をいただくことなんじゃないですか?」と聞いてみたら、キッパリ「いえ違います、カネのためだけです」と言われましたよ。その辺からの意識改革は、絶対に必要ですよ。

C:もう事務所の感覚が、女優じゃなくて「商品」なんですよね。それでマネージャーは歩合制ですから、メーカーに売り込んで自分の業績になればそれでいいってなっちゃう。私が知ってるある女の子は、自分がやりたいことを少しずつやらせてもらえるということで、ある事務所に入ったんですけど、本人の希望を無視して、できそうだからってどんどんハードな現場に入れて、結局潰しちゃったんですよね。

E:そのマネージャーって、事務所の社員なんですか?

一同:正社員ですよ。

A:社員じゃない場合もありますよ、社長とか役員とか、ね。

E:でも社員が、給料以外の報酬をもらうっていうのは…?

B:だから歩合制なんです。歩合がつくと、他の業界ではありえないような、べらぼうな額が支給される。ただ事務所の言い分を代弁するなら、彼らもリスクのある女の子を管理していて、なにかあって捕まるのは俺たちなんだから、それに見合った報酬を受けてもいいじゃいか、ということになるんですよね。その言い分にも一理あるんですけど、でもやるべきことはやってないんですよね。

C:事務所が女の子の意向を汲み取って、どちらも納得できる形で営業できれば、短期間でなんでもやってパッと消えるのも、長く続けるのもアリだと思うんですよ。でもそういうことをしないで、事務所の意向だけでコトを進めてしまってやるべきことをやらず、それが強要につながっていくんですよね。

女優と監督の「化学反応」

A:撮影現場で一番大事なのは、女優さんとか出演者の自己決定権だよね。SEXさせに現場に行かせるんじゃなくて、あくまで演じるということを重視すべきだと。あとはやっぱり監督力なんだよな。コミュニケーション能力というか、相手の気持ちを汲み取りながらやっていくというのが、監督に必要な能力なんだけど…。

D:そうですよね。疲れてるときに「おまえこれやれ!」って言われると…。

A:ムカっとくるでしょう。それを察知できないとね。

D:それってAV以外の仕事でも必要ですよね。

A:人を見る目を持つように、監督が勉強していく必要があるよね。

D:それはAVの強要問題に限らず、パワハラやブラック企業にも同じことが言えますよね。

B:でもそういった能力を持ちながら、逆に使って強要しちゃう監督が、今でもいるんですよ。

C:フェチ系の監督でもそういう人がいますよ。

B:そういうフェチも、映像として表現したいっていうんならわかるんですよ。でも現場でそういうのにこだわるって、単に自分がやりたいだけなんじゃないかって。

D:そんなこと言ったら、人殺しじゃないと殺人犯の役はできなくなっちゃいますよね。

C:でもそういう心意気というか「これを作品にしよう!」っていう熱意は大事だと思うんですよ。人とは違う、特化したものがないと撮れないというのはあると思うんですけど、ただ、それを映像にするときの見せ方ってきっと、他にもありますよね。

A:そういう本物を使おうとすると、演出力はもちろん、演技力も必要になってくる。だからこそ女優さんには監督の意を汲んで欲しいし、その場だけでいいから共感して欲しいんだよね。

E:観る側からしても、出演する女性はあくまで女優さんであって欲しいんですよ。AVの中でハードなことをされていることに対して「これ本当だったらどうしよう」と思うと、安心して観ていられないんですよ。

A:でも混ぜっかえすようだけど、観ている人が目をそむけるような映像を作れたら、それはそれでスゴいことなんだよね。バッキー(*1)みたいに、本当にやっちゃうのはダメだけど。でも僕が演出した作品の中で、少しでも「これ本当?」って観ている人が思ってくれたらイイなって思ってます。ただ女の子をだますことだけは、本当絶対にしたくないな。

B:ノンフィクションなAVを撮ったとしても、それで即強要になるわけではないですしね。ノンフィクションであればなおさら、出演者になにがどこまでできるかを聞き出すべきだし、その上でこちらが何を要求し、どう撮るかをきっちり決めることでこそ、監督と女優さんをはじめとした出演者との化学反応みたいなことが起こるんですよ。それを出演者に黙って、撮る側が勝手にやっちゃうのは強要どころか、非人道的以外の何物でもないですよ。

E:実際そんなことやっちゃって、それが流通しちゃったという話を聞くと…。

B:この業界が反社会勢力の巣窟になりかねませんよね。それは絶対アウトでしょう。

D:そういう「前例」ができちゃってるから、いくら良い作品を作りますって言っても「違法なことしてるんでしょ?」という先入観で見られやすくなっていますよね。

性というタブーとゾーニング

C:今の適正なAVって、どんどんソフトになっちゃってる。たとえばSMには、パンツを脱がないハードなプレイってのがあるんですよ。そういうのは、限定した人たちに見せるぶんには全然問題ないんですけど、FC2とかFANZAとかに乗せると、それを見た普通の人が「これヤバくね」って騒ぎ出すと思うんですよね。

D:スナッフビデオ(*2)扱いになっちゃいますよね。

B:性に対するイメージ自体がそうですよね。「性は隠すべきもの」という意識が強すぎて、性表現をする者は皆、社会不適合者だ、みたいな。

G:じゃお前ら、どこからどうやって生まれてきたんだよ!じゃないですか!

B:そう、生まれてきたところにモザイクかけて、なにやってんだよって話になるじゃないですか。そういう自分に全然気づかないで、そういったものを見ると反社会的だとかって炎上、糾弾したいだけなんですよ。そういう意識が変わらない限り、こういう風潮は続くんじゃないですかね。

D:自分が目をそむけたいものでも、それが好きな人もいれば、それではないと興奮できない人もいるわけじゃないですか。そういう事実と、自分の感情を切り分けて考えないといけないと思うんですよね。さっきCさんが言っていたハードなSMも、作る人と見る人の合意ができていれば問題ないと思うんですよ。もちろん、本当に傷つけたり殺したりってのは論外ですけど。でも今みたいに、誰が見ても当たり障りのないものばかりになってしまうと、作り手が持つノウハウが活かせなくなって、結局衰退につながっていくんじゃないでしょうか。「AVなんてなくしちゃえ」という人なら、それがいいことなんでしょうけど…。

C:FANZAとかだとAVメーカーの作品について、レビューを一生懸命書き込む人がいるんですけど、実はそこに書かないけど観てるって人がほとんどなんですよ。たまにそういう人と話す機会があって聞いてみると、ほぼ全員が「観たいAVがない」って言うんです。

A:肝心なのは「見たくない人には見せない」という住み分け、ゾーニングができていないってことなんだよね。法律に反しない限りで、納得して観る人たちだけが観られる場が重要なんだけどなあ。

無料AVを教科書にする若者たち

A:でも僕の作品は、観たい人だけが観てくれているわけで、いろいろレビューもいただいているんだけど、作品を評価してくれる人がいない。スカトロ作品を観てくれても、出た量や回数が多かったとかいうのばっかりなんですよ。それは大メーカーの単体作品でも同じで、女優がかわいいとか胸が大きいとかってのがほとんど。さっき言った監督力が落ちていて、女優も女優という自覚がなくて、観てくれる人も作品を評価しない。AVにかかわる三者とも弱体化している。

D:もうこの際、業界を全部ガラポンして、やりたい人だけ立ち上がった方がいいような気がしますね。

A:それも一つのやり方だけど、でも僕はAVって絶対、なくならないものだと思うんだよね。

C:むしろなくしちゃったら、性犯罪が増えるんじゃないですかね。

D:そこは難しいところですよね。AVを教科書にしちゃう若い子もいたりして。

C:実際そうなんですよね。ソープの子の話を聞くと、AVで一生懸命勉強して、金を貯めて感覚つかめたから行こう!って人が多いって言うんです。それも好きな女の子とかナンパって段階を省略して、いきなりソープで。でも教材が教材だから、うまくできないってことばかりなんだそうです。

D:実際やっぱり女の人は人間であってモノじゃないんですから、人間同士のコミュニケーションがなくて、いきなりSEXできると思うなよって話ですよね。例えばガシマン(*3)なんてされても、気持ち良くないんですよ、実際、痛いだけで。女性たちが集まるとそういう話が出てくるけど、男性たちにはそれが伝わらないんですよね。

C:あれはAVとしての表現なんですよね。アソコにはモザイクがかかっているわけですから、そこにはテクニックがあるんですよ、企業秘密ですけど。

B:私はそのためにタイの学校まで行って、人体学を学んできました。

D:たとえば緊縛師の方は、ちゃんと関節の自由度や筋肉の動きに配慮しながら、危険がないようにやってるんですよ。だから、業界ではハードと言われる撮影の方が楽だったという女優さんもいらっしいました。でも観ている人は見えているところだけを、見よう見まねでやっちゃって、ケガさせたりしてるんですよね。

B:極端な話、女性って気分さえ盛り上がっていれば、中に挿れて動かさなくてもイケるんですよ。しみけん(*4)さんも今、YouTubeで同じこと言ってます。「AVなんて参考にするんじゃない!」って。

C: FC2とかなら、電マあてられてイキまくるとかってもうタダで見れちゃうんですよ。そういったのがいつもランキングの上位にあるから、若い男の子がそういうの観て参考書がわりにされちゃうんでしょうね。そういう子たちには、もうAVを買うっていうことはありえないことでしょう。

劣化するAV業界と「良い作品」

B:AVってもう昔みたいな、お金を出して見る娯楽じゃなくなってるんですよね。

F:僕もAVは見なくなりましたね。今あるのって、どれもほとんど変わらないじゃないですか。かわいいお姉さんがいっぱいいるのは知ってますけど、やることとか流れが変わらなんですよ。今は海外のエロチャットとか観てます。女の子が、チップが欲しいからいろいろ工夫してるんですよね。それをリアルタイムで見るんで、面白い。

G:私は半年前までエロ本のライターやってたんです。AVレビューを書きまくっていたんですけど、見るビデオ見るビデオ出てる女の人以外は、全部一緒。それをあたかも違う作品であるかのように書くっていうのが、僕らのミッションで、そこが腕の見せ所でした。で、そうしないとAVメーカーさんは納得してくれなくて、納得してくれないと次からDVD貸してくれなくなって、そうやって好きなはずの仕事がつまんなくなって、その割に原稿料も激安で、もういいや!というわけで今、肉体労働やって楽しく貧しく暮らしてます。

D:それって完全に「知の劣化」ですよね。

G:本に限らず、エロ業界自体がかなり劣化しているという気はします。平成の30年で日本が劣化したという言い方があるんですが、エロ本もAVもそうなってるんだろうなと。本が売れてる頃は自分でネタを作れたわけですから、経費をかけていろいろ研究して、それこそ良いものが作れた自負はあるんです。でもそれが売れなくなって、できなくなってしまった。それに出版のデジタル化で、アソコが墨消しからモザイクになったんですね。だから消えてるけどなんとなく見せられるようになった結果、モザイクの小ささ競争が激化して逮捕者まで出たあげく、顔よりもアソコの方がでかい写真を載せるってところに落ち着いちゃったんですよ。で、それはAVの絵作りでも同じだと思うんですよね。レンタル時代のAVにくらべて、セルで多くの人が買えるようになったら、過激さを出すためにそれまでは誰もやらなかった、局部アップで画面全体にモザイクがかかった絵が出てくるようになった。それを見た瞬間、インターネットで自分の作った写真がタダでばらまかれているのを知ったときと同様「この業界、終わるかもしれないな」と思ったんです。
だから今の事務所の考え方は、セルビデオが全盛で「安くたくさん売れる」という時期と変わっていないと思うんですよね。さっきから話を聞いていて違和感を感じたのは、なんで演技しないのに「女優」って言わなきゃいけないの?ってこと。SEXするのを見せるだけなら、それは女優じゃない。かつては作品だったものが、たんなるヌキネタになったわけで、それに対してお金を払っていたものが、今はもう払わない。

D:見る側がそういうタダのモノを求めているか、作る側の意識劣化と怠慢なのか、どっちが先かっていうと…。

G:それは明らかに作り手の劣化ですよ。商品を買う側って、並んでいるものから選ぶしかないじゃないですか。住宅が典型例だと思うんですけど、生涯賃金の4分の1とか出さなきゃいけないでかい買い物なのに、建売住宅っていう並んでる商品から選ぶのが、普通ってされてるんですよ。それも地震があったら崩れそうな崖の上とか、停電したら歩いて帰れないような高層マンションとかに、ね。

B:実は今、毎月FANZAで100本近く作品を買って見てるんです。見る以上、お金を払うのはクリエイターに対する礼儀ですからね。けど、99%駄作なんです、お金を出す価値がないんですよ。A監督の作品も観ますけど、10本のうち9本までは意味わかんないです。でも…。

A:お金返しますよ。

B:でも、印象に残るし面白いんですよ。だから作品として売れるわけだし、良い作品だと言われるんです。好きとかわかるとか以前に、作品としてちゃんとしたものって、こちらに伝わってくるなにかがあって、そういう作品を作っている環境は安全でもあるんですよね。

A:安全な環境じゃないと、良いものは撮れないんだよ。

「強要をなくすために審査方法を変える」とは?

A:…というわけで、今日は契約書の話まで行かなかったなあ。

C:この、A監督が持ってきた新しい契約書を見てると、遅刻とか体調管理とかってありますよね。私が業界に入ったころは、こういうこと当たり前に言われていましたよ。あと自己都合、親が危篤とかなら、早めに連絡もらえれば延期ができるかもって言われていて「あなたのために撮影できなくなったら、100万円がむだになりますよ」と説明されたんです。でも今の女優さんって、そういう説明なく事務所に入ってくるんですよね。

B:なんで事務所がそれを言わなくなったかというと、そう言ってしまうと法律的には事務所の指揮命令系統に女優が入ってしまって、職業安定法違反に引っかかる可能性が出てきているからなんですよ。

F:え、仕事なのに遅刻するなと言えないんですか?

B:はい、AVはSEXをする仕事で、法律では有害業務と言うんですが、それ自体が職業安定法違反なんです。だから事務所が、女優に遅刻するなと言ってしまうと、女優が事務所という事業所の指揮命令系統に入ってしまうので、自分たちが違法であると認めることになっちゃうんですよね。

C:でも遅刻しないとかって、仕事として当たり前のことでしょう。

A:まあそれはそれとして提案なんですけど…僕は審査は嫌いです。だけどどうしても審査をするのであれば、出演した女優さんに審査に加わってもらいたいんですよ。それで女優さんが審査にOKを出す前であれば、この契約書はいつでも解約できるようにする。そうすれば、かなり強要は減らせるような気がするんですよ。

D:今は商品になって流通し始めた後でしか見れないわけですから、たしかにそれで女優さんの納得度も上がると思いますね。

A:編集や審査の段階でも、女優さんとのやりとりは作品づくりに直接役立つから、必要だと思うんだよね。

B:今、女優さんの7、8割は、恥ずかしいから自分の出た作品は見たくないって言いますよね。

A:商品のゾーニングといっしょで、見たくない人は見なければいいわけだから、それも選択のうちのひとつだよね。

D:逆に、見たいけど見れないっていうのも、問題がありますよね。

C:審査や編集に参加するのって、今後の女優を育てるって意味でもいいと思うんですよね。

A:そういう審査だったら、やってもいいよな。

C:女優さんも、仕事としてのAVの見方が変わってくると思いますよ。

D:監督のその話は、将来的に審査団体の立ち上げに結びついていくんでしょうか。

A:そういう方向に持っていかないと強要はなくならないし、Cちゃんも言ったけど、育てていくってことでも意味があると思うんだよね。

C:イベントもいっしょで、出てる側がお客さんを育てるんですよ。一定のルールがあって、そこから外れたらちゃんと説明します。それによって来なくなる人もいますけど、それはそのイベントに合わないということが、お互いわかったってことですから、それでいいんですよね。

D:地下アイドルの中には、マニュアルがいろいろあって「これはやらないでください」「これはうれしいです」みたいな注意事項が、びっちり書き込んである人たちもいます。まさにそれと同じですよね。

C:女優はもちろんですけど、一部のADも同じようなパターンがあって、その場に行けば日当が出るから来てなにもやらないって人が増えてるんですよね。そういうのも育てないといけないかな。

A:とにかく、作る側、出る側だけでなく、観る側も育てていきたいんだよ。そういう環境があれば、撮影の1週間後に「私やっぱりイヤです」ってことになったら「じゃそのときの現場の経費を負担してくださいよ」っていう、仕事として当たり前のことが言えるようになるんだよね。そのかわり、倫理的なものとかには絶対口を出さない。できた作品に対して責任を持つのは作った人間であって、審査団体じゃないんだよね。でき上がったものに対して、モザイクが濃いの薄いのとか、ペットボトルにモザイク入れろとか言われても、ピンと来ないんだよな。

D:それ聞いて私も笑っちゃいました。「そこなんだ」って。忖度文化も凄まじいですね。


↓注釈

(*1)バッキー:バッキービジュアルプランニング。20〜30人の男優が一人の女優を暴力的に犯す作風が売りだったAVメーカー。一時期人気があったが、撮影内容を知らされていない女優への違法薬物投与と、無理な撮影内容によって女優に重傷を負わせるなどの行為で社長以下スタッフが逮捕され、社会問題になった。

(*2)スナッフビデオ:娯楽目的で製作された、実際の殺人現場を記録した映像作品。いくつかの存在が噂されてはいたが、いずれも都市伝説とされていた。しかし2008年、インターネットに出現。制作した若者2人は逮捕され、主犯は終身刑の判決を受けている。

(*3)ガシマン:AVで行なわれる、過剰に激しい女性器への刺激。ガシマン〜潮吹きという定番の流れになっている。娯楽としてのAVならではの、派手な手の動きが特徴だが、実際には女性器を確実に損傷させる極めて危険な行為。

(*4)しみけん:イケメン&マッチョで、女性に絶大な人気を誇るAV男優。ブロガーのはあちゅうと事実婚。